帳簿、税金、確定申告、控除、源泉徴収。聞くだけで拒絶反応を示したり、「もうイヤ!」、となったりする方も多いんじゃないでしょうか。頭が痛くなるものばかりですよね。
フリーランスには必須の知識
しかし、フリーランスであれば帳簿付けは必須だし、支払うべき税金の種類も、確定申告の方法も覚えておかないといけません。源泉徴収が会社員と異なる点も注意が必要ですね。
一部は当サイトでも記事別に解説していますが、今一度必須の知識をまとめてみました。フリーランスの皆さん、脱サラ予定の方、そしてクラウドワーカー、ノマドワーカーの方々、少しずつでも覚えていきましょう。
※一部を除き白色申告を対象に解説しています
提出は2月半ば~3月半ば
さて、確定申告の提出期間はいつからいつまででしょうか?毎年2月16日~3月15日が申告期間です。ただし、土日祝に当たる場合は前後します。
また、郵送あるいは信書で送付できますが、3月15日必着です。ギリギリだと間に合わないおそれがあるので注意しましょう。
期限が過ぎても申告は可能です。しかし期限申告となり、無申告加算税(5%~20%)が課税されるリスクがあります。税率おっかないですね。なので毎年3月15日までに忘れず申告しましょう。
1月1日~12月31日までの所得が対象
確定申告は1年間の所得を税務署へ申告する制度ですが、いつからいつまでの所得を申告するんでしょう?毎年1月1日~12月31日の所得が対象です。
例えば2016年1月1日0:00~12月31日23:59までに得た報酬は、2017年2月16日~3月15日の間に確定申告をします。今は2016年度ですから、今年の分は来年ですね。
2017年の報酬は2018年に、2018年の報酬は2019年になってから申告を行います。次の年に確定申告すると覚えておきましょう。
収入・所得の違い
良く混同するのが「収入」と「所得」です。この違いを理解していないと、確定申告や帳簿を付ける際に混乱します。
収入は、言葉の通り収入を指します。月収や年収と同じですね。例えば1月に20万円、2月に25万円の報酬を受け取った場合、収入は1月が20万円、2月が25万円、年収が45万円となります。
もう一つの所得は、「経費を差し引いた」残りのお金を指します。もし年収が45万円、経費で10万円かかったとしましょう。この場合は、所得が35万円になります。
例
年収:200万円・経費:77万円の場合…
200-77=123
123万円が所得です。税金は所得に対して課税されます。
控除を全て考慮しない場合、この例でいくと、123万円が課税対象ですね。所得が195万円以下のため、所得税は5%ですが、住民税は所得に関係なく、一律10%なので注意しましょう。
また、住民税は所得割と均等割という2つの計算方式があります。上記の10%は所得割で、さらに自治体ごとに定められた均等割が追加され、最終的な納税額が決まります。所得税もややこしいですが、住民税もややこしいです。
ただし、住民税の申告は所得に関わらず必要なので、自治体の市民課・住民課窓口で手続きしましょう。
確定申告が必要な所得基準
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確定申告は全てのフリーランスが対象、とは限りません。一定水準以下の所得であれば、確定申告は不要になります。
会社員でもないフリーランスの方は、1年間の所得が38万円を超えると確定申告が必須です。37万9999円なら申告不要。
会社員の傍らでフリーランス業を営んでいる方や、会社やバイト先から給料をもらっている方は、20万円以上で確定申告が必要です。19万9999円なら不要、ですね。
ただし、不動産の家賃やアフィリエイト、ネットオークションの転売、その他諸々の合計所得で計算する必要があります。
給料をもらってない専業のフリーランスの方の場合、例えば請負や委任契約による収入が15万円、アフィリエイトの収入が25万円、1年間の合計が40万円だったとすれば、経費を引いた金額が38万円以上なら確定申告しないとダメです。
経費が1.5万円かかった場合…
40-1.5=38.5万円→確定申告が必須
〃2.1万円かかった場合…
40-2.1=37.9万円→確定申告は不要
ややこしいですね。
「収入-経費=所得」です。給料をもらっているなら20万円、もらってないなら38万円と覚えておけば大丈夫だと思います。
白色申告と青色申告の違い
確定申告は、白色と青色の2種類があります。どっちがどっちか分からなくなりますよね。どっちでもいいじゃん、となる反面、帳簿の付け方が変わるので注意しましょう。
白色申告は簡易簿記と呼ばれる方法で日々の収支を記帳していきます。収入と支出(経費)のみ記帳が必要で、家計簿に近いですね。
青色申告は複式簿記による記帳が義務づけられていて、簡易簿記よりも複雑です。日々の入出金を細かく仕訳します。貸方・借方、事業主勘定、売掛金などを覚えないといけないので、ちょっと仕組みがややこしくなっています。ただし、青色申告対応ソフトを使えば(少しだけ)楽になるかも。
また、フリーランスになった時点では、全員が白色申告による帳簿付けが必要です。青色申告は税務署への届出が必要で、個人事業主開業届と一緒に提出すると手間が省けます。
基礎控除と特別控除
さて、控除について覚えておきましょう。所得税・住民税には「基礎控除」、というものがあります。基礎控除とは、条件に関わらず、所得から控除される金額です。
所得税の場合、基礎控除は一律38万円です。1年間の所得から38万円を差し引きます。年間所得が200万円だった場合、基礎控除を引いた金額は162万円ですよね。この200万円に対して課税するのではなく、162万円を基準に所得税を割り出します。195万円以下は税率が5%のため、所得税は31,000円になりますね。
住民税の基礎控除は33万円です。所得税より5万円ほど少ないので注意しましょう。計算は上記と同様で、200万から33万円を差し引き、167万円に対して課税されます。住民税は10%のため、最低でも16万7千円ほどになりますね。そこに均等割が上乗せされます。
特別控除ですが、これは「青色申告の方限定」です。まさに特別で、複式簿記で記帳している方は、65万円も控除できてしまいます。基礎控除とは別個で計算されますから、計103万円の控除を利用できます。ただし…記帳の手間はかかります。
また、医療費や保険を始め、さまざまな控除があります。白色・青色共通で利用できますから、どんどん活用しましょう。税金が還ってくることもありますからね。支払った国民健康保険・国民年金も控除対象です。白色申告の方でも、この2つの控除は大きいですよ。
帳簿・領収書類の保存は5~7年
白色申告・青色申告ともに複数の帳簿を使い分けますが、これらは一定期間の保存が義務づけられています。
白色申告(簡易簿記)では、帳簿類が7年間です。法廷帳簿と呼ばれる売上帳(売り上げや収入が分かるもの)と、経費帳(支出を書いたもの)の2つが対象。仕入れ帳はフリーランスに関係ありません。ただし、自分で作ったオリジナル帳簿の保存期間は5年間です。
青色申告(複式簿記・現金主義)も、帳簿類は7年間の保存義務があります。総勘定元帳や仕訳帳、預金出納帳に売り掛け・買い掛け帳あたりが法廷帳簿ですね。
確定申告に使用した書類(※決算関係書類)も7年間は保存が必要です。これは白色・青色問いません。いずれも7年間は保管しておきましょう。
領収書の保存期間ですが、白色申告の方は5年間、青色申告の方が7年間です。ただ、だいぶ例外があって、特に青色申告は少々ややこしくなっています。
さらに青色申告は書類によって保存期間が変わるため、5年なのか7年なのか、混乱することは間違いないと思います。2年前の所得が300万以下なら、一部の書類が5年でOKだったりします。何故?
また、白色申告・青色申告を問わず、請求書や、納品書、送り状なども保存の対象です。これも青色申告では5~7年と、書類により変わります(白色は5年)。
とにかく帳簿や書類ごとに保存期間を分けるのは面倒くさいですから、白色や青色問わず、帳簿も領収書もまとめて7年と覚えておくのが一番楽だと思います。
誰もが記帳の義務あり
白色申告は、収入が300万以下なら帳簿付け不要、って聞いたこと無いですか?この情報は古いです。現在は収入に関わらず、全員が記帳義務を負っています。副業にいそしんでいる方も、フリーランスも最低限、簡易簿記による記帳は必須ですよ。知らなかった方、今からでも作りましょう。
支払い調書について
会社員の源泉徴収票に該当する書類が支払い調書です。フリーランスでもクライアントから源泉徴収される場合がありますが、年明けになると送付されてくるのがコレ、支払い調書。源泉徴収票とほぼ同じです。
支払い調書は無くても大丈夫
しかし、中には支払い調書を送ってこないクライアントもあります。焦りますが、実は無くてもOKです。確定申告時に提出する書類ではあるものの、添付は任意のため、送ってこないならそのまま申告を済ませましょう。
ただし、源泉徴収額が分からない場合は、クライアントの報酬に10.21%掛けて計算するか、聞いてみましょう。
支払い調書の金額が合わない理由
受け取った金額や、1年間の収入と支払い調書の金額が合わない!大変や!と慌てることも良くあります。でも、合わないのが普通なんです。12月の報酬、実際に受け取るのは1月・2月だったりしませんか?
支払い調書記載の金額は、源泉徴収とクライアントが「実際に支払った金額」になるため、帳簿上の収入とのズレはたびたび発生します。例えば末締め翌月15日払いの場合、12月に稼いだ報酬は、翌年の1月15日にならないと受け取れません。
しかし、確定申告は1月1日~12月31日の収入が対象ですから、申告時には1年ほどズレが生じてしまう可能性があるんです。2015年12月の報酬は、実際には2016年1月に支払われます。2016年分の支払い調書に含まれるんですね。
2015年12月に20万稼いだ→2016年1月15日に20万円振り込み
2017年に送付される支払い調書に、この20万円(2016年中にクライアントが払った報酬)が含まれます。
それでも合わない、おかしい!って時は、手数料類を疑いましょう。「実際に払った金額」なので、支払い調書に記載されるのは、振込手数料や切手代を”差し引いた金額”です。
ただ、振込手数料も相手持ち、1年分の全ての報酬を受け取っている(振り込まれている)のに金額が合わない、という場合、クライアントが数字を操作してる可能性、あるいは自身の記帳ミス、計算ミスが疑われます。一度計算しなおしてみましょう。
例えば、1~11月に50万円分仕事をし、年末時点で全額報酬を受け取っているのに、支払い調書記載の金額が40万円。源泉徴収を足しても帳簿の50万と合いませんよね。税務署に相談しましょう。
マイナンバーの必要な手続きとか
マイナンバーは2016年より運用開始されました。便利になった感じしませんね。フリーランスは、確定申告、国民健康保険、年金、その他手当の申請時に必要です。基本的にそれ以外は不要。支払い調書への記載も義務のため、仕事でもたびたび使うことになります。
フリーランスが払う税金の種類
フリーランスは税金で沢山持っていかれそうですが、支払うべき税金は、所得税、住民税、個人事業税、消費税の4種類です。所得税と住民税は、20万or38万以上の所得がある方全てが対象になります。
個人事業税は、所得が290万円以上、かつ文筆業(ライターなど)以外の方が対象です。税率は業種によって3%~5%で、290万円が控除されます。290万円が超えた部分が課税対象ですね。所得が300万なら、10万円に対して個人事業税が発生します。業種により税率が変わるので、税務署で聞いてみましょう。ライター系の仕事をしている方は気にしなくてかまいません。
消費税は、”収入”(または売上・報酬)が1000万円を超えたフリーランスが対象です。999万9999円までならセーフ。ただし、滅多に無いうえ、課税対象になってから2年間の猶予があります。月収が83万を超えると危険ゾーンですが、通常は気にしないでも良いでしょう…私もあまり詳しくはないです。
最低限覚えておきたいところ
気付いたら、ここまでで5千字近くなってた。簡単な解説で済ますつもりが、ややこしくなってしまったかもしれません。ごめんなさい。
いずれもフリーランス、クラウドワーカー、ノマドワーカーの方々なら、覚えておきたい知識です。今後独立予定の方も、いずれ必要になりますので、触り程度でも予習しておくと後が楽ですよ。仕事を始めてから慌てなくて済みます。
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